ー働こう。街で、チームでー 働き方の実験場「THE CAMPUS」プロジェクト裏話【担当者インタビュー】
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ー働こう。街で、チームでー 働き方の実験場「THE CAMPUS」プロジェクト裏話【担当者インタビュー】

GOOD WORK DAYS.

<「行くべき場所」から「行きたい場所へ」。これからのオフィスとは?>

こんにちは! GOOD WORK DAYS.編集部です。 

突然ですが、このたび、私たち編集部メンバーも働く コクヨ東京・品川オフィス「THE CAMPUS」が、2021年度グッドデザイン金賞を受賞しました!

築40年超えのコクヨの自社ビルをリノベーションし、今年2月に完成した「THE CAMPUS」。北館・南館2棟のビル低層階をセミパブリックスペースとして街に開き、お客様や街の人たちとの交流や発見をもたらす場所へと生まれ変わりました。南館4階から上はファニチャー事業部のオフィス、北館にはショールームやミニスタジオ、商品開発の拠点などを配置しています。

南館の1階にコーヒースタンドとショップ、2階には新規事業開発のためのオープンラボがある。南館と北館をつなぐ屋外広場「PARK」を抜け、北館1階「COMMONS」はイベント時などに開放

本コラムではこれまで多くの企業様にコロナ禍でのオフィスリニューアルについてお話を伺ってきましたが、実は「THE CAMPUS」のプロジェクトも、コロナの影響を受けた事例の一つ。正解の見えないなかで模索しながら、働き方や生活様式の変化をポジティブにとらえ、プロジェクトを進めていったといいます。

そんなわけで前置きが長くなりましたが、今回は「THE CAMPUS」のプロジェクトに関わった3名のメンバーにインタビューを実施。「THE CAMPUS」はどのようにつくられたのか? プロジェクトの裏話を伺いました。

※取材・撮影は2021年7月に実施。撮影時のみマスクを外しています。

プロフィール
左)低層階企画担当 鹿野 喜司:コクヨ株式会社 ヨハクデザインスタジオ
中)企画担当 安永 哲郎:コクヨ株式会社 経営企画本部 イノベーションセンター
右)運営担当 鷲見 幸代:コクヨ&パートナーズ株式会社 サービス開発部

街に開き、交流と体験を生む場に

ーまず、みなさんは「THE CAMPUS」のプロジェクトにどんな経緯で参画され、それぞれどんな役割を担当されているのですか?

安永 コクヨが運営するライフスタイルショップ&カフェ「THINK OF THINGS」の立ち上げに携わったことなどをきっかけに、「THE CAMPUS」のプロジェクトに参画。施設全体のコンセプトやコンテンツディレクションなどの企画を担当しました。

鹿野 僕も同じく「THINK OF THINGS」の立ち上げ、その後はヨハクデザインスタジオとして施設の企画とデザインをつなげる役割をしている経緯もあり、「THE CAMPUS」のプロジェクトに参画しました。

鷲見 私はいまキッチンカーやコーヒースタンドの外部パートナーさんとの連携業務や「PASS THE BATON MARKET」の運営サポートなどを担当していますが、もともとはコワーキングスペースの担当として参画しました。

のちほどお話すると思いますが、当初「THE CAMPUS」にはコワーキングスペースを設置するという構想があり、私がコクヨ&パートナーズでコワーキングスペースの立ち上げや運営を経験してきたことから、声をかけていただきました。

ー「THE CAMPUS」はどんなコンセプトのもとで、つくられたのですか?

安永 コンセプトは「みんなのワーク&ライフ開放区」です。テクノロジーの発展やグローバル化、また環境問題などの社会課題の拡がりとともに、人々の価値観や生き方にも大きな変化が起こり始めています。これまでのように都市に一極集中するオフィスのあり方や、みんなが同じ時間・同じ手段・同じ環境で働くといったことも減っていくでしょう。

品川は大企業のオフィスも多く、朝の通勤シーンに代表されるように、画一的なビジネス街でした。そんな ❝グレー 一色❞ の品川を、多様な価値観が混ざり合うカラフルな街に変え、わくわくしながら働ける、「わざわざ来て人と集いたくなる場所をつくろう」という思いを掲げて、プロジェクトを進めていきました。

館内には社員がセレクトしたアート作品が点在。
どこにあるか探してみてください!

 ー「THE CAMPUS」は「街に開く」がテーマですが、なぜそういった場をつくろうと思ったのですか?

安永 働くことと暮らすことの境界が曖昧になっていく時代に、街とオフィスの関係性も更新されていくのは自然なことだと思います。これまで自社のオフィスとして閉じていた場を街に開き、みんなの場所にする。これまで起こりえなかった交流を促し、自由と発見を歓迎する。そこから何が生まれ、どんな体験がもたらされるかを、身をもって確かめる。「THE CAMPUS」はそんな実験場となることを目指そうと考えました。

まさかのコロナ流行。変えたこと、変えなかったこと

ーそんななかでコロナ禍になり、一度計画が白紙になったと聞きました。

安永 はい。最初の緊急事態宣言が発令されたときは すでに一部工事が着工しており、大幅な方向転換は物理的に困難。当時の状況下では「こんなご時世に『街に開く』なんて空気が読めていないのではないか?」「今後、『チームで働く』なんてありえないのではないか?」と、これまで検討を重ねて決めてきたことを見直す必要に迫られました。当時のプロジェクトメンバー30名ほどが集まって、まだ慣れないリモート会議で議論していました。

ーその後、どのようにチューニングしていったのですか?

安永 当初の計画では、先ほどお話に出たコワーキングスペースをはじめ、サウナや宿泊スペース、フードコートなどの設置が構想にありました。これら人が集まるような施設としてのチャレンジは、いったん見送りとなりました。

ですが結果として、「街に開く」という根幹の部分は変えなかったんです。コロナを機に世の中にリモートワークが浸透し、ニューノーマルという言葉が使われはじめたとき、「自分たちが思い描いていた、もっと先に訪れると思っていた未来、つまり働き方や集い方の変化が、思いのほか早く訪れた」と前向きにとらえました。

ー数年先の未来を先取りして考えていたんですね。

安永 はい。実際に完成してみたら違和感もなく、自分たちが目指していた方向性は間違っていなかったと実感できました。

鹿野 「街に開く」のテーマが変わらなかったことで、低層階を多様な人が交流する場所にしたいという思いに対する「PARK」や低層階をできるだけオープンにするという考え方は、コロナ前後で変わっていませんね。

キッチンカーのある風景。目指した街の姿とは?

ー先ほどフードコートの構想があったと仰っていましたが、その代わりとなるキッチンカーは、いまや「THE CAMPUS」の象徴の一つですよね。導入にあたり、どんな狙いがあったのですか?

鷲見 まずは、ランチの選択肢を増やすこと。品川ってほかのビジネス街に比べて、ランチができる飲食店が圧倒的に少ないんですね。そこへ日替わりのキッチンカーを登場させることで、ランチタイムに新しい選択肢とワクワクを届けたいと思いました。

キッチンカー出店者を取りまとめる事業主と提携し、毎日通ってもたまに出社しても飽きない、日替わりのメニューを提供。出店者は事業主主導でオフィス街に人気の高い店舗をセレクト。

ーたしかに。日替わりなことに加えて、どの出店者さんもメニューが多いので、いつも迷いに迷っています(笑)。

鷲見 ありがとうございます(笑)。もう一つの狙いとしては、ワーカーと街の人たちとの交流です。ビル群が連なる品川港南口は、お隣さんの顔が全く見えず関係性が無機質。ファミリーもたくさんいるのに、違う世界の住民のように他人事で互いに興味を持っていないと感じます。コクヨ社員、近隣ワーカー、品川住民がゆるやかに交差し、共有しあえるパブリックスペースを、自然に活用してもらえたらと思っています。

ー実際、キッチンカーや1階のコーヒースタンドに近隣のワーカーや学生さんが並ばれていたり、「PARK」やショップで子どもたちが遊んでいる姿もよく見かけます。

「THE CAMPUS」の象徴ともいえる1階屋外の中庭。コクヨ社員はもちろん、近隣ワーカーやファミリー連れ、学生など、多様な人たちがコーヒーを飲んだり、思い思いに過ごしている。

鷲見 「街」は人がつくるもの。お隣さんの顔が見えないと「街に開く」のテーマも独りよがりになってしまいます。キッチンカーやショップでの購入体験、イベント参加など体験拡張を促して、街に顔見知りを増やしていく。「THE CAMPUS」につどった人達で、品川の街をどうしていきたいかを考えて実証実験していく。ワーカーが働く場所以上に自分の街だと楽しんで過ごせる、それを周りの住民と分かち合える。そんな場所になったらいいなと願っています。

キッチンカーのメニューは、どうしても食べやすさやボリューム重視になりがち。
「ヘルシーなメニューの提供も、今後検討していきたい」と鷲見さん。

ー最近はランチ以外に、クレープのキッチンカーも出店されていますね。

鹿野 当初は、ソフトクリームを売りたいっていう案もあったんですよね。

鷲見 そうなんです。甘いものって、人と人の関係性を柔和してくれると思うんですね。たとえば、普段は仕事のことしか話さない上司とも、「〇〇さん、イチゴ味が好きなんですね」みたいなことを笑顔で言い合える(笑)。会話術とか意識しなくても、どんな人ともラフな会話をしやすい空気が生まれるんですよね。これから、たとえばリアル会議の場に持ち込めるようなスイーツだったりドリンクだったり、「働く場」とか「チーム」という視点で、メニューを企画してみたいですね。

ビールを飲みに出社する?
これからの「働く」と「食」

―「THE CAMPUS」では、「食」のコンテンツは重要な要素の一つとして検討されていたそうですね。

鹿野 はい。それこそ「働く」と「暮らす」がシームレスになり、「食」は注目すべきコンテンツでした。「オフィスで働く時間」には、同僚や上司部下、あるいは取引先など「誰かと過ごす時間」も含まれます。食事の時間を誰とどう過ごすか、先ほどのクレープの例のように、「働く」と「食」をかけあわせると、その先にはいろんな可能性がありそうです。

これまで多くの人に語られていると思いますが、「食」はやはり有効なコミュニケーションツール。僕自身、相談したいことがあると、よく食事に誘います。「打合せがてら飯食いましょう」みたいな感じで。

渋谷の「UB1table」や「NEON」など手がけた空間事例は多数。
「働くと食」に関するものも多い。

鹿野 仕事中心のコミュニケーションから離れ、食事の時間を共有することで、お互いにモードが切り替わる。それによって相手の個性を垣間見ることができる。まさに多様性に触れる瞬間ですよね。そんなふうに、多様な人といろんなモードで会話できる「食」のシーンが、これからのオフィスには必要なんだと思います。

ーたしかに。仕事中の印象と違って、こんな人だったんだ、と発見があって驚くことがあります。

安永 ちなみに最近はクラフトビールの販売も再開しました。ここ数年、働き方の柔軟な変化が強く求められるようになっていますが、「働く」ことだけに真正面から向き合っても答えは出ないと思っていて。そういったときにクレープやビールのようなものが、いい‶ハズし”になると考えています。

コロナ禍になりオフィスの存在理由が問われるいま、「オフィスに来たら働く以外のことはしてはならない」という価値観から卒業するとき。「あの人と話したいから、今日はオフィスに飲みに行こう」みたいな、極論、オフィスはビールを飲みに行くための場所と考える人が出てきたとしてもいいんじゃないかと(笑)。

ーそれは毎日オフィスに行きたくなりますね…!(笑)

南館1階のBGMは数日流しっぱなしでも同じ曲がかからないよう安永さんが選曲。
安永「通勤中や移動中も、ずっと音楽を選んでます。苦ではないです」
鷲見「そこまでできるの、安永さんだけですよ(笑)!」

変化し続ける、未来の「THE CAMPUS」

ー「THE CAMPUS」のプロジェクトに参画されてみて、いかがでしたか? 感想や想いを率直にお聞かせください。

鷲見 本来、コクヨ&パートナーズにとってコクヨさんは顧客になるので、これまでは営業担当を経由してのコミュニケーションしかできなかったんです。それが今回、同じプロジェクトメンバーとして多様な方と切磋琢磨したことで新しい関係性が築けましたし、「みんな同じ文脈で『働く』ことについて考え、仕事をしていたんだ」と実感することができました。今回のプロジェクトでできたつながりを、今後の仕事にも活かしていきたいですね。

安永 「答えのないものに立ち向かう」という経験は、会社員人生でそう多くないと思います。そこにチャレンジさせてもらえたことは大きかったです。今回のように、この先の変化を見据えてポジティブに「余白をつくる」といった活動は、会社の仕事を超えた自分自身のチャレンジでもあり、楽しんで取り組めました。

鹿野 「体験をつくる」という取り組みは、これからコクヨが力を入れていきたい部分。さらにそれ(体験)を伝播していこうという「THE CAMPUS」の試みは手探り状態で、難しさを感じていました。しばらくは「感染対策との共存」をしながら、リアルイベントの開催やコンテンツのアップデートを重ねていくのだろうと思います。「THE CAMPUS」は「これで完成」ではなく、つくったあとに徐々に変化し続けていくことが大事だと思っていて、変化を続け、いままで品川にいなかったような人たちが溢れる場になるといいなと思います。

「街に開く」のイメージを具現化できた蚤の市イベント「PASS THE BATON MARKET」は
12月に3回目を実施。区外からも家族連れが訪れたり、毎回大盛況。

仕事とは? オフィスとは?

ーみなさんにとって、仕事とは?オフィスとは?

鷲見 私は過去にフリーランスの経験があったこともあり、「仕事の時間」「それ以外の時間」と分断してとらえていないんですね。ハッと閃いたときに、企画書を書きたい。なので、ABWやスーパーフレックス制といった働き方は自分にすごくフィットしているんです。こういうフリーランス的な働き方が、世の中にこれからもっと受けれられたらいいなと思います。
その一方で、リモートワークが浸透したことで、最近、街中のカフェがすごく混んでいて……。前のように「カフェでリラックスして働こう~」ということができない(苦笑)。なので、いまは逆にオフィスがねらい目。結局、一番気持ちよく働ける場所ってオフィスなんだと思っています。

鹿野 最近は「仕事は仕事」と切り分けて考えていなくて、いわばライフワークの一部のようにとらえてます。仕事で知り合った人ともビジネスパートナーでもあり友達にもなるし。その連鎖がどんどん自分の幅を広げていくんです。一人で黙々と仕事をすることも好きなんですが、それだけだと悲しくなってくるし、できないことも多い。なのでいろんな人と連携しながら新しい価値を出していくのが楽しい。なのでオフィスは「仲間に合う場所」っていうのがしっくりきますね。

安永 「仕事」って「仕える」という漢字を使いますけど、じゃあ自分は何に仕えているんだろうと考えたら、それは「未来」かもしれないなと。常々、100年後、200年後の未来に対して、自分の仕事がどんな役割を担って、どんな意味を持つのかを意識していたいと考えています。
オフィスリニューアルというと「空間をカッコよくして、使い勝手をよくして」と近視眼的なことにとらわれがちですが、それが10年後も同じ価値を保ち続けられるかは分からない。「THE CAMPUS」をつくるにあたっては、「街や社会」「働く人」「体験」といった広い視点で考え続けることは絶対に忘れないようにしていました。いつも、どれだけ長い時間軸で物事をとらえるかを考えながら働いているので、たまに社内で「いつもとらえどころのない仕事をしているね」と言われてしまうのですが(笑)。

ーみなさん、ありがとうございました!

いかがでしたでしょうか?
担当者たちの思いがつまった「THE CAMPUS」は、ライブオフィスでご覧いただけます。ぜひ体験してみてくださいね。

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日本の倉庫を空っぽに。「PASS THE BATON MARKET」開催レポート

(おわり)


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